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DXレポートとは?初版から最新版まで3つのレポート内容をわかりやすく解説

日本におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)は、残念ながら大きく遅れています。そのような状況を把握し、どのようにDXを推進すればいいのか、その指針となるのが経済産業省が発表する「DXレポート」です。この記事では、これまでに3回公開されている「DXレポート」について、それぞれの内容を解説します。

DXレポートとは?初版から最新版まで3つのレポート内容をわかりやすく解説

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DXレポートとは?

「DXレポート」は、DXを推進するために経済産業省が作成・公開している資料です。2018年9月に最初のレポートが公開され、2021年8月までに3つのレポートが公表されています。

近年、新しいITシステムを基盤としたDXの導入が世界規模で進められる中、日本経済や企業の停滞が懸念されています。そのため、経済産業省が主導して企業のDXを推進することで、日本経済の発展を促そうとしているのです。

しかし、現状では改革があまり進んでおらず、このままでは世界に対してだけでなく国内でも取り残される危険性があります。経営者はこうした状況を理解して、経営戦略が大きく変動する潮流に対応していかなくてはなりません。

経済産業省では、これらの課題を踏まえ、「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を発足し、議論を重ねてきました。その内容をまとめたものが一連の「DXレポート」です。

DXレポート(2018年9月)の内容

「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」と題した最初のレポートは2018年9月に公開されました。このレポートは、古いシステムを運用し続けることによるさまざまな問題点を指摘しています。特に大きな問題として取り上げられているのが「2025年の崖」です。複雑化・ブラックボックス化した既存システムで運用を行っている企業は、この問題について知っておかなければいけません。

2025年の崖とは

「2025年の崖」は、現在使用している複雑化・ブラックボックス化した古いシステム(レガシーシステム)を使い続けている企業が、このまま刷新せずにいた場合に予想される大規模な経済損失の懸念を指します。

2025年以降、毎年12兆円もの経済損失が発生すると考えられており、日本経済に深刻な打撃をもたらすことが予測されるのです。これを避けるためには、レガシーシステムを刷新しなければいけません。しかし多くの企業では、レガシーシステムの刷新にかかる期間やコストがかかったり、そもそも問題点の把握ができていなかったりするため、新しいシステムに移行できないという問題を抱えているのです。さらにIT人材の不足により、システムに携わった従業員の退職に伴う引き継ぎが行われず改修できないという課題もあります。

DX実現シナリオとは

このレポートでは、2025年までにレガシーシステムを刷新してDXを実現することを想定した対応策を提示しています。DXを推進することで、2030年までに実質GDP130兆円超の押し上げが実現すると予想しています。

DX実現シナリオとして、まずは経営判断のレベルでレガシーシステムから廃棄・塩漬けするものを仕分けた上で、体制の構築や刷新計画の策定などを実施することが想定されています。次に、経営戦略を踏まえて実際にシステム刷新を集中的に行います。不要と判断されたシステムは廃棄したり、更新を頻繁に行う必要のあるシステムはマイクロサービスを活用して段階的に刷新したり、協調領域においては企業間や業界での共通プラットフォームを活用したりすることで、リスクの軽減を図ります。

DXの推進に向けた対策について

レポートでは、DXを推進するために、指標・ガイドラインの策定やリスク対応策の設定、DX実現後に向けた人材育成といった対応策を提案しています。

DXを行うためには、経営層が現状を把握しなければいけません。そして、目的を定めて、ガイドライン策定や、コスト・リスク低減のための対応策構築といった準備をすることで、DXに失敗する確率を抑えられます。

以上のように、このレポートでは「2025年の崖」や「DX実現シナリオ」を産業界全体で共有し、さまざまな課題に対応しつつ、DXシナリオの実現を目指すことが示されています。

DXレポート2(2020年12月)の内容

2回目のDXレポートは「DXレポート2(中間取りまとめ)」と題したもので、最初のレポートから2年後の2020年12月に公開されました。このレポートは、2年経過後の状況や、新型コロナウイルス感染症とDXの関係について解説しています。

コロナ禍によって表出したDXの本質

経済産業省が2019 年7月に策定した「DX推進指標」の自己診断を分析したところ、約95パーセントの企業がDX にまったく取り組んでいないか、散発的な実施に留まっている段階にあることが分かりました。日本企業においてDXは進んでいない現状が浮き彫りになっています。

しかし、2020年初頭から始まった新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワーク制度の導入やネットワーク増強といった対応を迫られました。その結果、3月のテレワーク導入率が約24%であったのに対し、緊急事態宣言の発出を経た4月調査では約62%と、1カ月で2.6倍に増加したのです。

いわゆる「コロナ禍」において、DXに踏み切った企業は対面販売、通勤、客先常駐、押印文化といった既存の業務プロセスに疑問を抱き、変化に迅速に対応していることが分かりました。このことから、DX推進には「通勤しなくてはいけない」「対面で業務をおこなわなければいけない」といった、従来の企業文化そのものを刷新することが重要であると判明したのです。

企業が取るべき対応の方向性

このレポートでは、新型コロナウイルスの流行を受け、企業が取り組むべき対応として「業務環境のオンライン化」「業務プロセスのデジタル化」「従業員の安全・健康管理のデジタル化」「顧客接点のデジタル化」の4点を挙げています。

まず「業務環境のオンライン化」では、テレワーク対応やオンライン会議など、オフィスワークから脱却した働き方を目指します。次に、「業務プロセスのデジタル化」では、従来の紙媒体で行っていた業務の電子化・ペーパーレス化や、RPAによる定型業務の自動化といった対応が該当します。「従業員の安全・健康管理のデジタル化」は、活動量計で従業員の健康を管理したり、人流を可視化することで職場環境を整備したりすることで、従業員の安全を向上します。最後に「顧客接点のデジタル化」は、ECサイトによるオンライン販売や、チャットボットによる対応業務の自動化を目指します。

これらのツールやサービスを導入するには経営者のリーダーシップが重要となる一方、DX導入のファーストステップとしての役割を果たし、コロナ禍における事業継続にとってもメリットがあるとしています。

【最新版】DXレポート2.1(2021年8月)の内容

2021年8月に、3回目のDXレポートとなる「DXレポート2.1(DXレポート2追補版)」が発表されました。このレポートの主なトピックとして、「ユーザー企業とベンダー企業の関係性」と「DX後のデジタル産業像」の2点が挙げられます。

ユーザー企業・ベンダー企業の現状とジレンマ

ユーザー企業はベンダー企業に業務を委託することで「コストの削減」というメリットを享受し、一方のベンダー企業は業務受託によって「低リスク・長期安定ビジネス」というメリットが生じます。このような相互依存関係は定位安定をもたらす一方で、3つのジレンマが存在するとレポートでは分析しています。

まずひとつ目は「危機感のジレンマ」と呼ばれるもので、ユーザー企業・ベンダー企業双方が危機感を持ちづらく、変革に必要な体力が失われてしまう、という問題です。
次に「人材育成のジレンマ」は、ユーザー企業では外注により自社の人材が育たずにシステムがブラックボックス化してしまい、ベンダー企業でも技術の陳腐化のスピード化によって新技術の習得が追いつかないという問題が指摘されます。
最後に「ビジネスのジレンマ」は、ベンダー企業がユーザー企業のDX推進を支援することでDX推進が進み、そのことでベンダー企業が不要になってしまう、という問題です。

以上のようなジレンマを打破するには、企業経営者のビジョンとコミットメントが不可欠であるとレポートは結論付けています。

デジタル社会とデジタル産業の姿

次に、このレポートでは「デジタル社会とデジタル産業の姿」という項目が設けられ、そこでは「目指すべきデジタル社会の姿」として、(1)社会課題の解決や新たな価値・顧客体験の迅速な提供、(2)グローバル競争力の高い企業や持続的発展に貢献する企業の創出、(3)資本の大小や中央・地方の別なき価値創出への参画、の3項目が挙げられます。

このようなデジタル社会では、データとデジタル技術が社会を構成する中心的な要素となり、あらゆるプロセスにおいてる主観的な判断からデータに基づく客観的な判断へと変
化したり、オープンアーキテクチャで多様なサービスがつながったりする特徴が考えられています。

これらを実現するのがデジタル産業であり、「課題解決や新たな価値・顧客体験をサービスとして提供する」「サービスを環境の変化に伴って常にアップデートし続ける」といった姿が想定されます。目指すべきデジタル社会の実現に必要となる機能を社会にもたらす存在として、デジタル産業の姿が考えられているのです。

まとめ

経済産業省が発表した「DXレポート」では、日本企業においてDXが進まない状況やDX実現の重要性、そしてデジタル社会の将来像などがまとめられています。

統合的なクラウド環境を提供する「Microsoft 365」は、企業のDXを支援するだけでなく、新型コロナウイルス感染拡大によってオフィスワークからの脱却を必要とする企業において強力なソリューションとなるでしょう。

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